アニスシード
ハーブティー・精油と期待される効果効能紹介

胃腸・喉・ホルモンバランスと幅広い作用を持つ

お菓子やジャムを作る時に使う甘い香りのスパイス、アニスシード。古くから香料や薬草として利用されてきた歴史があり、古代ギリシアでは母乳の出を良くする、古代ローマでは胃の調子を整えるハーブとしても利用されていました。現在でも消化不良や胃もたれなどを和らげる働きが期待されているほか、咳や気管支炎のケアにも取り入れられています。またエストロゲンと似た構造を持つ「アネトール」を含んでいることが注目され、更年期・PMS(月経前症候群)・生理不順など女性領域のサポートにも期待されていますよ。

画像:アニスシード(Aniseed)


アニスシードについて

植物紹介:アニス

アニスは地中海東部地域が原産のセリ科の植物です。ハーブとして利用される部分は果実にあたりますが、種子のように見えることからアニスシードもしくはアニシードと呼ばれています。同じくセリ科のフェンネル(茴香)などと似た甘い香りが特徴で、中華料理に使われる八角がスターアニスや大茴香と呼ばれているのは、アニスやフェンネルに似た香りから代用品として利用されていたことに由来しています。

甘い香りを持つアニスシードはケーキやクッキーなどの菓子類、リキュール類などへの香りづけが知られていますが、魚介類の料理やソースなどにも利用されています。日本ではあまり馴染みがありませんが、若い茎、葉、花は野菜として食用にもされています。根部もスープなど煮込み料理に利用できるようです。

アニスは古くから香料や薬草として利用されてきた歴史を持ちます。古代エジプトではミイラを作る際の消臭・防腐剤として用いられ、紀元前1550年頃に書かれたエジプト最古の医薬書「エーベルス・パピルス」にもアニスの記述が見られます。古代ギリシアでは母乳の出を良くする、古代ローマでは胃の調子を整えるなどの目的でも利用されていました。

ヨーロッパでは9世紀頃から栽培もスタートしますが、原産地から遠いイギリスでは栽培が普及せずに輸入されていたため高価なスパイスでした。15~16世紀にはイギリスでも広く栽培されるようになり、1525年イギリスで刊行された「バンクスの本草書」には肝臓の機能低下予防やガス排泄促進などの効果が記載されています。そのほか邪視による災難など悪いエネルギーから守ってくれる・枕の下に入れると悪夢を見ないなど、魔除けの効能も長く信じられていたようです。

基本データ

通称
アニスシード(Aniseed)
別名
アニシード、西洋茴香(セイヨウウイキョウ)
学名
Pimpinella Anisum
科名/種類
セリ科ミツバグサ属/一年草
花言葉
活力、慈愛、人を騙す
誕生花
12月30日
使用部位
果実(種子のように見える部分)
代表成分
精油(アネトール、エストラゴール、クマリンなど)、コリン、糖類、粘液質
代表効果
去痰、鎮咳、駆風、消化促進、鎮痙、利尿、刺激、女性ホルモン様、消臭、防腐
こんな時に
咳、気管支炎、咽頭炎、胃もたれ、腹部膨満感、消化不良、月経不順、生理痛、更年期障害、PMS(生理前症候群)、口臭予防
おすすめ利用法
ハーブティー、ハーブチンキ、料理用ハーブ(香辛料)、精油
ハーブティーの味
スパイシーさと甘さのある香り、味は微かに苦味も混じる
カフェインの有無
ノンカフェイン

アニスシードの栄養・成分・期待できる効果

アニスシードティー

体の調子を整える

呼吸器系の不調に

アニスシードは痰切りに役立つサポニンなどを含むことから、去痰・鎮咳作用のあるハーブとされています。痰が絡むときや風邪などで喉の不快感があるとき、気管支炎の予防や緩和などに利用されています。喉の不快感が強い場合はタイムマーシュマロウなどとブレンドして利用されることも多いようです。


胃腸機能向上に

アニスは古代ローマ時代から消化促進や胸焼け予防として利用されてきた歴史を持つハーブです。胃腸の働きを促して消化を助けてくれるほか、腸内ガスの排出を促しお腹の張りを和らげたり、吐き気・胃もたれ・腹痛・下痢・消化不良などに効果を発揮すると言われています。インドでは食後の「げっぷ止め」としても利用されているようです。

消化器系の不調の場合はジャーマンカモミールとよくブレンドされます。胃もたれや吐き気を治めたい時にはペパーミント、ストレスが起因の胃腸不調の場合はセージなど症状に合わせて他のハーブを追加すると相乗効果が期待出来ます。


ホルモンバランス・女性の身体に

アニスの種子に含まれている甘くスパイシーな独特の香りの元となるフィトエストロゲン(植物性ホルモン)「アネトール」は女性ホルモンのエストロゲンと似た分子構造を持ち、ホルモンバランスを整える働きがあります。

更年期・PMS(月経前症候群)に

アニスなどに含まれているアネトールなどのフィトエストロゲンと呼ばれる物質は、エストロゲン受容体へ入り込み、本来のエストロゲンと比べると作用が弱いもののエストロゲンを補うように機能します。そのためホルモンバランスの乱れを緩和し、エストロゲン量の減少により引き起こされる更年期障害の諸症状の緩和に有効とされています。

またフィトエストロゲンはエストロゲンと競争してエストロゲン受容体へ入り込もうとする性質があります。エストロゲン分泌量方の女性の場合には受容体のいくつかに作用の弱いフィトエストロゲンが入り込むことで、全体的に見るとエストロゲンの働きを弱める働きもあると考えられています。

エストロゲンの不足を補い過剰な場合は抑制する、この両方の働きによってホルモンバランスを整えるため、生理前になると身体に様々な不調をきたす月経前症候群(PMS)の緩和にも役立ちます。


月経不順・生理痛に

月経不順になる原因はストレスや不規則な生活など様々に言われますが、子宮や甲状腺系などに異常がない場合は、発端が何であったにしろ結果ホルモンバランスが乱れて起こると考えられています。そのためホルモンバランスを整える働きのあるアニスシードは月経周期の正常化にも有効と言われています。ホルモンバランスを整える働きに加え、鎮痙作用などもあるため生理痛の緩和にも役立つと考えられます。


老化防止・バストアップ

更年期~閉経後の女性の場合、エストロゲン分泌量が急激に減少することが老化促進の要因になると考えられています。アニスシードなどの植物性エストロゲン摂取により、エストロゲンの急激な減少を抑えることが老化予防に繋がると考えられています。

またフィトエストロゲン摂取とどこまで効果が結びつくかは定かではないものの、エストロゲン様物質の摂取はバストアップや女性らしいボディライン作りにも役立つのという説があり、スタイル作りなどの面からも注目されています。


産後の利用について

アニスは産後の心身の回復(バランスの乱れを整える)ことや、母乳の分泌を促進するなど効果もあると言われています。母乳分泌促進にはアニスシードではなく葉を利用するのが一般的です。産後に飲むのに適したお茶としてアニスティーが紹介されている場合もありますが、ホルモン様物質を含むため医師・ハーバリストなどの指示なく自己判断で摂取するのはおすすめできません。成分が濃縮されている精油などの利用は避けましょう。

お茶以外の使い方(外用)で期待できる効果

口臭予防に

アニスシードはローマ時代には既に口臭を消す矯臭剤として利用されていたと考えられています。現在でも消化促進や口臭予防としてインドでは砂糖と混ぜてガムのように噛む人もいるようです。アニスシードをそのまま噛まなくても、ハーブティーをうがいに利用することで口臭予防に役立ちます。<

虫除けとして

アニスの香り(精油成分)には虫が嫌う香りの成分が含まれ、ノミやダニ避けに効果があると言われています。精油の場合は濃度の調整が難しいですが、アニスのドライハーブを使ってポプリなどを作れば、さりげなく甘い芳香の天然防虫剤として利用できるでしょう。

アニスシード精油に期待される作用

精油の経口摂取(飲用など)は出来ません。また、アニスシードの精油は皮膚刺激が強いためマッサージやスキンケアなど皮膚へ直接付けることは控えたほうが無難です。

心への作用

アニスシードの精油は気持ちをリフレッシュさせ、前向きさを取り戻す手助けをすると言われています。高揚と鎮静両作用があるためイライラや過剰な興奮時は気持ちを鎮め落ち着かせる働きもあり、感情のコントロールが上手くできない時などにも約立ちます。どちらかといえば刺激・高揚作用が強いので、疲れてグッタリしているときや気持ちの落ち込みなどでネガティブになっている時に適しているでしょう。


体への作用

成分が濃縮されたアニスシードの精油は女性ホルモン(エストロゲン)様作用を持つアネトールの含有量が非常に高くなっています。そのためハーブティーよりも更年期・PMS(月経前症候群)・生理不順などの緩和には高い効果が期待出来るでしょう。

そのほかに胃腸を整える働きや呼吸器トラブル改善効果があると言われていますが、非常に強い精油のため濃度や使用頻度などには注意が必要です。高濃度での使用や常用は避けましょう。


アニスシードの注意事項

  • 妊娠中の方は利用を避けましょう。
  • 精油の場合、妊娠中・授乳中・幼児・高血圧の方の使用、高濃度・高頻度での使用を避けましょう。